数日後。。。
グレオ
「おっ、ミレイちゃん、ハトムギタンパク質のこと何かわかった?」
ミレイ
「だいぶ分かってきたわ。もしかしたら、昔の食品成分表は、今と数値が違っていて、アミノ酸バランスが良かったのかなって思ったの。食品成分表って、1950年に初めて発行されて以来、何度か大きな改訂が行われて、今は、八訂になっているのよ。ハトムギが食品成分表に登場するのは、1982年に発行された四訂からで、そこには、ハトムギのアミノ酸数値も測定されていて、アミノ酸スコアも29という低い数値で掲載されていたのよ。」
グレオ
「へー、そうなんだ、じゃあ、1982年には、すでに良質のタンパク質ではないことを国として発表していたんだね。」
ミレイ
「そうなの。ハトムギが良質のタンパク質を含むっていうのは、過去の食品成分表に記載されていたことではなかったわ。」
グレオ
「なるほど。」
ミレイ
「そこでね、もしかしたら、書物や論文でハトムギタンパク質のことが書かれていないかなって調べたのよ。」
グレオ
「ほー。」
ミレイ
「そしたらね、多くの雑穀研究者が参考書籍にしている、小原哲二郎博士の『雑穀ーその科学と利用』という書物があるの。1981年に出版された、いろいろな雑穀の栄養のことも詳しく書かれている学術書なんだけど、その中では、ハトムギのアミノ酸の測定データを示しながら、”ハトムギのタンパク質は良質とはいいがたい”って明確に書いてあるのよ。」
グレオ
「雑穀の学術書に!」
ミレイ
「さらに、今は農研機構という名称の研究所なんだけど、当時の農林水産省 食品総合研究所の研究報告集の中から、1984年に発表された、ハトムギのタンパク質に関する研究論文を見つけたの。そこでは、”ハトムギのタンパク質の栄養価は非常に低い”って、記載されていたのよ!!!」
グレオ
「なんと、農林水産省の論文まで!! 」
ミレイ
「それで、こんなにも学術書や論文で”ハトムギは良質のタンパク質ではない”と報告されているのは、もしかしたら、当時、“ハトムギは良質なタンパク質である”と言われていたんじゃないかなって思ったのよ。」
グレオ
「なるほど。でも、それって、単にうわさレベルなのかな?」
ミレイ
「私は違うと思う。ここまで研究者が否定しているってことは、単なる町のうわさではなく、何か出どころになっている、影響力の大きな “何か” があるって考えたのよ。」
グレオ
「大きな何か、か。。ついに、核心に迫ってきたね。その真実は解明できそう?」
ミレイ
「うん、そこでね、さらに遡って、雑穀の学術書が出版された1981年以前に、ハトムギのタンパク質について何か重大なことが書かれていないか探したの。そして、ついに見つけたの。1980年に出版された『新編食用作物』。雑穀やマメ類、イモ類など、食用作物のことが詳しく書かれていて、当時、農業系公務員試験の参考書にもなって、今でも多くの論文に参考書籍として掲載されている食用作物のバイブル本よ。」
グレオ
「へ~、公務員の参考書や研究論文にも。」
ミレイ
「見て!ここよ。このハトムギの栄養についての記載部分、”ハトムギはタンパク質に富み、栄養価が高い”ってあるでしょ。」
グレオ
「ほんとだ! でもどうしてそう書いているのかな?」
ミレイ
「内容を見るとアミノ酸分析はされてなく、タンパク質の量しか測定されていないのよ。タンパク質含有量が多いのは確かなので、書き方としては間違っていないの。しかし、その後アミノ酸分析がなされて、ハトムギには、リジンやトリプトファンが低く、タンパク質としては良質ではないってことがわかったの。」
グレオ
「なるほど、1981年に出版された学術書では、アミノ酸の数値が載っていたよね。科学技術の進歩で、より詳しく分析されるようになったってことだね。」
ミレイ
「そういうことね。新編食用作物に書かれた内容が拡大解釈されて、当時、良質なタンパク質を多く含むって表現になったと思う。。」
グレオ
「これで、ついにハトムギタンパク質の謎もすべて解決だね。おめでとう。バンザーイ! やったね!」
ミレイ
「でも、、まだ、、」
グレオ
「えっ、どうしたの、まだ何かあるの?」
ミレイ
「本当のハトムギタンパク質の謎は、ここからなの。」
グレオ
「えっ! どういうこと?」
ミレイ
「それはね、研究者がなんども否定して、食品成分表でもリジンやトリプトファンが低く、明らかに良質とはいえないのに、なぜ、令和の時代になった今でも、ハトムギは良質のタンパク質を多く含むって表現が使われているのかってことなの。」
グレオ
「ホントだ。科学的に見て、明らかに間違っているのにね。でもどうして?」
ミレイ
「その理由は、もう少し調べないと話せない。。グレオくん、来週、私の考えをまとめてくるね。」